情報提供:ビュートピア
美容室の安定経営において、新規顧客の獲得以上に重要視されているのが「再来率」。
いくら新規集客が増えても、リピートされなければ売上や信頼の積み上げにはつながりません。
では、お客さまが「また来たい」と感じる瞬間、あるいは「もう来ない」と心を決める瞬間とは、いったいどこにあるのでしょうか?
ホットペッパービューティーアカデミーの調査「美容室MOT(再来意向)調査」から、今回は “カウンセリング”にまつわるデータに注目し、顧客心理の変化と、サロン現場でできる工夫について紐解いていきます。
文・作表 田中公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
①お店離れのきっかけ、2位に「カウンセリング」
「美容室を変えたいと思う瞬間」について、女性20〜59歳を対象にした調査結果では、「施術」(32.7%)に次いで、「カウンセリング」(24.7%)が2位という結果に。
つまり、技術が問題なくても「この人には話しづらい」「ちゃんと伝わらなかった」と感じた時点で、すでにお客さまの心が離れてしまっているケースがあるということ。
「うまく伝えられなかった」「わかってもらえなかった」…そんな小さなズレの積み重ねが、“また来よう”を“もういいかな”に変えてしまっているのかもしれません。
②「ちゃんと聞いてくれない」「覚えてくれてない」が不満に
カウンセリング中に「もう次はないかも」と感じた理由を見てみると、「ちゃんと向き合ってくれてないな」と思わせてしまう対応が目立ちます。
カウンセリングは、ただお客さまの希望を聞くだけはありません。お客さまにとっては、“ここなら安心して任せられるか”を見極める時間ともいえるでしょう。
だからこそ、「前回と同じ話をしたのにまた聞かれた」「なんだか流れ作業っぽいな」…そんな印象を持たれると、再来にはつながりにくくなってしまいます。
特に4位の「前回の施術内容を覚えていない(11.7%)」は、年代別に特徴が出ています。
③40代女性は「覚えてくれていない」ことに最も敏感
年代別に見て特徴的だったのが、「前回の施術を覚えていない」と感じてお店を離れた人が、40代女性で22.0%と圧倒的に多かったことです。
40代は仕事・家庭・自分の時間と、いろいろな役割を抱えながら日々を過ごしている世代。
そんな中でのサロン時間は、ただ髪を整えるだけではなく、「自分に戻れる特別な時間」でもあるでしょう。
だからこそ、「ちゃんと覚えてくれている」「前回の話を覚えていてつなげてくれた」…そういう小さな積み重ねが、信頼や心地よさに変わっていくのかもしれません。
④「また来たい」と思うきっかけも、やはりカウンセリング
逆に、カウンセリング時に「また来たい!」と思った理由を聞いたところ、上位に挙がったのはやはり“人との関わり方”にまつわる項目でした。
どれも、ただ施術のための聞き取りというより、「この人は自分のことをちゃんと見てくれている」「一人のお客として大事にしてくれている」と感じられたことが理由になっています。
つまり、また来たいと思ってもらえる理由は、技術の高さやメニュー内容だけではなく、接客の中での安心感や信頼感にもあるということでしょう。
カウンセリングは、単なる情報交換ではなく、「ここにいていい」「この人に任せたい」と思える関係性を築く大切な時間とも言えます。
⑤20代は「話を聞いてほしい」傾向が強い
特に20代女性は、「話を聞いてくれること」に一番価値を感じていて、54.1%が再来理由に挙げています。これは全世代の中で最も高い数字です。
SNSや情報に敏感な世代だからこそ、サービスの内容だけでなく、“人としてのつながり”や“自分に寄り添ってくれる感じ”を重視しているのかもしれません。
一人ひとりに寄り添った会話を心がけることで、もっと距離が縮まるはずです。
⑥年代ごとの悩みを把握して、寄り添えるカウンセリングに
では、カウンセリングのとき、どんな話題に触れると“分かってくれている”と感じてもらえるのでしょう?
そのヒントになるのが、年代別に聞いた“髪の悩み”です。
実は、年代によって悩みはかなり変化しており、それぞれに合わせた対応が求められています。
10代・20代は「ヘアスタイル」と「ダメージ」が中心
若い世代で特に多いのは、「ヘアスタイルがうまく決まらない」「枝毛・切れ毛などのダメージが気になる」といった悩み。
この層は、トレンド感や見た目の仕上がりに敏感で、「どう見られるか」が大きな関心ごと。
SNSなどの影響もあり、理想のスタイルをいかに叶えられるかがカウンセリングでも重要なポイントになります。
また、カラーやブリーチ、アイロンの多用によるダメージがあることも多く、スタイルだけでなくホームケアのアドバイスも信頼感につながるでしょう。
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30代は“白髪のはじまり”と“クセ毛”の間で揺れる時期
30代は、悩みの種類がぐっと広がってくる世代。
白髪が気になり始めたり、髪質の変化に敏感になってきたりと、加齢による変化と、日々のスタイリングのバランスをどう取るかで悩む方が増えてきます。
この世代は、「まだおしゃれも楽しみたいけど、扱いやすさも大事」「白髪を染めるかどうか悩んでいる」など、揺れ動く気持ちに寄り添った提案が大切。
スタイルチェンジだけでなく、今後の方向性を一緒に考えるようなカウンセリングが喜ばれます。
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40代・50代は「白髪」と「ボリューム」が圧倒的多数
40〜50代になると、「白髪が増えてきた」「髪が細くなってきた」「ボリュームが出にくい」といったエイジングにまつわる悩みが中心になります。
この世代では、白髪に関する悩みが顕著で、特に50代では約65%が「白髪が気になる」と回答しており、年齢とともに髪の悩みが深くなる傾向が見て取れます。
「どう白髪と付き合っていくか」「無理なく若々しさを保つには?」といった会話の中で、ライフスタイルに寄り添った提案が求められるのがこの年代。
ケアの提案や、無理のないデザインアドバイスを通じて、安心感と信頼を築くことがカギとなるでしょう。
カウンセリングは施術の単なる前準備ではなく、「この人にまた会いたい」と感じてもらうための関係構築の第一歩とも言えます。
過去の施術を覚えていること、悩みに寄り添うこと、共感しながら提案すること。そのすべてが「また来たい」という気持ちを支えているでしょう。
忙しい日々のなかで数分間の対話を丁寧に行うことが、サロンの未来を育てていく…そんな時代に、いま私たちは立っているのかもしれません。
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■ データ出典
ホットペッパービューティーアカデミー
■調査期間
2023年8月
■調査対象
スクリーニング調査:女性(全国・20~59歳)64,000人
本調査:美容室/ヘアサロンのリピート意向者1,000人・変更意向者300人 のべ1,300人
・女性20~59歳、過去1年に美容室/ヘアサロンを利用した数
TANAKA KIMIKO/前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。調査研究員として、「美容センサス」をはじめとする美容サロン利用調査や美容消費の兆しを発信。セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。共著に『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか。